映画感想『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』/前作をはるかに超えるおもしろさ!
前作(2018)はノレなかったんですよ。
音を立てたら即死の状況なのになんで家族揃って薬の調達に行く必要があったのか、なんで幼い末っ子を家族の最後尾でそれもひとりで歩かせたのか、なんで子どもなんか作っちゃったのか…などなど、疑問に思うところが多くて、共感できなかったんですよね。
特に主人公・エヴリン(エミリー・ブラント)の妊娠は完全にアウト。
ホラー作品に完璧なリアリティなんて望んでないけど、必要最低限のリアリティは必要だと思うんですよ。そういった意味では、エヴリンの妊娠はリアリティのかけらもない。
赤ちゃんは絶対に大声で泣くし、コントロールできないのは誰しもわかること。家族みんなが大きなリスクを背負うわけですよ。僕なら200%子どもなんか作らないですけどね。
その赤ちゃんのおかげで物語は盛り上がるんだけど、ちょっと雑だよなぁ。すでに妊娠していて、幸せいっぱいのときに「何か」がやってきた、という設定にすればよかったのに…。
末っ子を失った家族の悲しみとか、父親と娘のすれ違いとか、家族の物語としてはグッとくるところがあっただけに惜しかったんですよね。
って、今さら前作をグチっても仕方ないか。
で、本作。
いやぁ、すごく面白かったです。前作を遥かに超えるおもしろさでした。来るぞ、来るぞ、きたーっ!みたいな心拍数が上がる王道の展開に、子どもたちの危なっかしさがプラスされ、いい感じに緊張感緊迫感のある仕上がりで。最後は感動までしちゃったし、かなり没入度の高いサスペンスホラーに仕上がってましたよ。
まずよかったのは、「何か」がやってきた1日目のシーンを冒頭に入れてきたところ。単に前作の続きから始めるのではなくて、なぜ世界がこんな壊滅的状況に陥ったのかという説明的なシーンを描くことによって、より前作との一体感がでて作品全体がグッと締まるんですよね。僕が言うのもあれなんですけど、ジョン・クラシンスキー監督のセンスを感じました。
日常から非日常へ変化する瞬間、パニック具合もすごく怖くてよかったです。一気に引き込まれましたよ。非日常への瞬間、これこそがサスペンスホラー作品の醍醐味じゃないですか。
行動力があり過ぎる長女リーガン(ミリセント・シモンズ)、ビビりな長男マーカス(ノア・ジュプ)、この2人がすごく成長して、最後なんて泣きそうになりましたよ。
特にマーカスはホント感動的なほどに成長を見せてくれてね。やっぱり人間て修羅場をくぐり抜けると成長するんですよね。
赤ちゃんを守りつつ自分も守りつつ、そして母親を守りつつ。ビビりなマーカス、最後はたくましかったなぁ。
リーガンとマーカス、子どもたちの成長は感動的だったものの、問題は母親エヴリンですよ。まぁ、ひどい。
「何か」から匿ってくれた恩人エメット(キリアン・マーフィ)に対して、勝手に出かけていなくなったリーガンを探してきて!友だちなら当然でしょ!みたいな自分勝手な言いっぷり。命がけで私の娘を探してきてくれってどの口が言うとるんやろ…。どう考えても監督不行き届きで、これはエヴリンのせいでしょ。お願いする態度には見えなかったなぁ(エメットってエヴリンの元カレかなんかなのかしら、っていうくらいの言いっぷり)。
エメットの住処に転がり込んできた上に自分勝手なことを言うエヴリンに結構カチンときましたよ。必死なんだろうけどさ、自己中で周りが見えてない感じが不愉快だったなぁ。
もしかして、赤ちゃんを作ろうって言い出したのはエヴリンなんじゃないですかね。そんな気がする(前作の話はもういいか)。
本作の終わり方を見る限り、間違いなく続編はあるでしょう。
今回、子どもたちは劇的な成長をみせてくれたので、いよいよ次作で反撃開始かもしれませんね。ひょっとしたら10年後くらいが描かれるのかもしれないなぁって予想しますけど、どうでしょう。
「何か」の弱点も見えてきたし、他にも生存者がいそうなので、ガラッと違う展開を期待したいなぁ。逃げてばかりの展開はもう十分、お腹いっぱいですよ。