ビボログ3.0

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映画感想『砕け散るところを見せてあげる』/青春でサスペンスなヒーロー譚

凄惨ないじめを受ける玻璃(石井杏奈)、そんな玻璃の前に現れたヒーロー清澄(中川大志)、そして2人の間に芽生える淡い恋心…という展開があまりにもベタすぎて小っ恥ずかしい気持ちになりつつもグッとくる前半の学園青春譚から一転!堤真一の登場でヘビーなサスペンスへと変貌する展開はたまらなくおもしろかったです。

さらに!僕の大好きな女優・石井杏奈さんがヒロインを演じているっていうこともありまして、えー、本作は傑作認定です。

 

いじめられている玻璃を救う清澄の爽やかすぎるヒーローっぷりを見て「こんな奴いねぇよ」とか「そこまでするか?」とか思ったり心の中で突っ込んだりしつつも、もうね、グッときてしまいました。清澄最高。

僕なんかアラフィフのくせにいまだにニチアサ(日曜日の朝にテレビ朝日系列で放映されているアニメや特撮などの子ども向け番組)の仮面ライダースーパー戦隊を見てるくらいにヒーローって大好きだし、特別な存在なんですよ。だから清澄の「自分のためにではなく他人のために行動する」というヒーロー然とした姿に人一倍胸に響くわけでして。清澄最高。

目の前で困っている人がいても見て見ぬふりをしたり、何かしら言い訳を作ってその場から逃げだしたりしたこと、一度や二度ありますでしょ?ぶっちゃけ僕はありますよ。

でもね、清澄を見て思いましたよ。悪党から世界を人類を救うだけがヒーローなんじゃないって。仮面ライダースーパー戦隊だけがヒーローなんじゃないんだって。困っている目の前のひとりを助ける、全世界を救うことはできないけど、少なくともその人の世界を救うことはできる、それがヒーローなんじゃないですかね。キミも、ヒーローにならないか?(なんだそりゃ)

まじめな話、目の前で困っている人がいるのならば手を差し伸べてあげるべきだと、今さらながらに思いましたよ。ただ、命を落としてはダメですけど…。

 

そんな清澄を演じた中川大志さん。最高。おそらくヒーローを演じさせたら右に出る者がいないんじゃないかっていうくらいに完璧なヒーローでした。そもそも顔がヒーロー顔だし、爽やかだし、スタイルもいいし、今後このようなヒーロー的な役は中川大志さんに演じてもらえば間違いないんじゃないですかね。いずれ変身ベルトを付けてニチアサに登場して欲しいくらいですよ。

 

で、後半はまさかのサスペンス。

まぁ、門限を気にする玻璃の雰囲気から不穏な空気は漂ってはいたけど、ここまでガッツリとサスペンスになるとは予想外でした。急転直下という言葉がぴったりの展開で、ここまで血生臭くなるとは…怖いわ、堤真一さん(玻璃の父親)。

ザ・ファブル 殺さない殺し屋』でもウツボという悪役を演じてましたけど(今回ほどサイコでは無かったけど)、陰湿な悪役が似合いますね。いやぁ、怖かった。

思っている以上にヤバい奴だった玻璃の父には戦慄したけど、クライマックスで清澄と玻璃の2人が、お互いがお互いの身の安全を思いやりつつも玻璃の父に立ち向かおうとする姿、お互いがお互いのヒーローになるという展開はホントに胸熱でした。

特に玻璃の父の秘密を暴くために自転車で2人乗りして沼に向かうシーンはよかったなぁ。希望に向かっているようで地獄に向かっているようで、青春でサスペンスでヒーロー譚である本作を象徴するような本作のベストシーンだと思いました。

 

そして何より、役者陣の素晴らしさよ。

中川大志さんはもちろんのこと、ヒロインを演じた石井杏奈さん。まぁ、個人的に好きな役者さんなので、ややひいき目に見ちゃうんですけど、こういう影がある役って似合いますね。元々顔つきに憂いがあるので(いい意味で)、玻璃役はハマってました。そしてやっぱり可愛かった…。

他には気の良い奴をやらせたら若手ナンバーワンだと個人的には思っている井之脇海さんの存在感も抜群。どうなんですかね。この調子でバイプレイヤーとして出演作を増やしていけば、田中圭さんのようにいずれ主役が回ってきそうな気がするのは僕だけでしょうか。結構好きなんですよね、井之脇海さん。

そして清澄のクラスメイトの尾崎を演じた松井愛莉さんとその妹の清原果耶さんも良かったなぁ。尾崎みたいな可愛くて大人びてツンツンしているクラスメイト、いましたもん。そういう子はだいたい彼氏は年上なんですけどね(どうでもいい)。

ちなみに松井愛莉さんの実の弟さん(松井蓮之さん)はJリーグ川崎フロンターレに内定しているという豆知識も書いておきますね。

で、清原果耶さん。若いのに結構大人びた役が多いイメージがあるけど、今回は等身大。『宇宙でいちばんあかるい屋根』のつばめ役に近くて、可愛らしくてちょっぴり生意気で、すごくいいキャラでよかったなぁ。

清澄の母親役の矢田亜希子さんもすごく可愛らしかったし(もっと映画やドラマに出演してほしい!)、クリーニングのおばちゃん役の木野花さんも素敵だったし、役者さんたちがみんな存在感があってよかったです。

 

残念だったのは、凄惨な事件後に清澄と玻璃が再会するシーン。もう少しドラマティックにして欲しかったなぁ。だって、ここはグッとくるところじゃないですか。離ればなれになったヒーローとヒロインの再会ですよ。ベッタベタでいいので、2人の思い出の場所とか2人を象徴するような印象的な場所での再会だったらさらにグッときたのになぁ。ここはSABU監督にひと言申したいところ。

 

青春譚でサスペンスなんだけど、作品全体としてはヒーロー譚という、文字にするとわけがわからないんですが(汗)、非常にインパクトがあって感動的ですごく良くできたヒーロー作品だなぁと。これはオススメしたい1本です。

そうそう。『砕け散るところを見せてあげる』という作品名の意味がよくわからなかったです。いったい、どういうこと?